■多くの文学者、芸術家とゆかりある町
江刺に宮澤賢治が訪れたのは、大正6年8月のことでした。江刺郡役所から土性調査を依頼された盛岡高等農林学校の学生として江刺地方を探査した賢治は、なだらかでゆっくりとした自然景観や、勇壮かつ優雅な伝統芸能にひかれ、その感動を「風の又三郎」などの童話や詩、短歌に表現しました。
その賢治によって、詩「人首町」に書かれた江刺市米里地区(現・奥州市江刺区米里)は、戦前から戦後にかけて活躍した詩人・佐伯郁郎が生まれた山里の宿場町です。郁郎は詩人でありながら官僚という特異な立場にあって、萩原朔太郎・草野心平・井上靖らと交流があり、近代日本文学史における貴重な資料を残しています。
このほか江刺は、川端康成(ノーベル賞作家)、菊田一夫(戯曲家)らの文学者や、及川豪鳳(日本画家)、菊地規(「北上夜曲」作詞者)、小牧正英(バレエダンサー)、大滝詠一(作曲家・歌手)などの芸術家たちとゆかりがある町です。
■「江刺ルネッサンスの会」創設の趣意
私たちは、これら先人たちとの縁を貴重な文化的遺産と捉え、残された貴重な資料を地域住民がより深く理解することが必要であると考えるとともに、その作品・活動・生涯を県内外にPRし、多くの芸術文化を愛する方々と感動を共有したいと考えました。
私たちは、「芸術的な魅力と潤いに満ちた地域づくり」と「個性豊かな文化と人材が育つ環境づくり」を目的に、江刺に関わる芸術文化の研究・発表活動を行い、さらに文化事業の企画推進、市民による文化活動の支援、文化振興に功績があった個人・団体の顕彰の三つを行政と協力しながら、民間主導で活動を行っていきます。
■「江刺ルネッサンス」命名の由来
私たちはこの運動体を「江刺ルネッサンス」と名付けました。「ルネッサンス」は、14世紀から16世紀にかけてイタリアをはじめ、近代の西ヨーロッパに起こった市民的文化運動です。「ルネッサンス」は、フランス語で「再生」「復興」を意味する言葉ですが、西ヨーロッパにおける「ルネッサンス運動」は、個性的な国民文化を形成し、文化の担い手をそれまでの聖職者と貴族から市民層へと広げました。
私たちは、地方色豊かで個性的ないきいきとした文化を生み出し、近代文化の先駆けとなった「ルネッサンス」の精神を活動の中心に据え、《江刺ルネッサンスによる地域づくり》を実行していきます。
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