■菊田一夫、小牧正英との縁
平成14年11月、小牧バレエ団団長の菊池宗氏が、小牧バレエ団の名誉団長・小牧正英氏の偉業を紹介する企画展「白鳥の湖伝説」(江刺ルネッサンスの会主催)を見るため、江刺を訪問した。
この日、菊池氏は平成15年4月に開館が予定されていた菊田一夫記念館の工事現場にも足を運んだ。
菊池氏はこのとき、戦後しばらく小牧バレエ団公演に東宝が関わっていたことがあり、東宝専属の劇作家であった菊田一夫と小牧氏に交友があったことを話された。また、小牧氏は川端康成とも交友があり、小牧氏と川端康成、菊田一夫の3氏は、何でも話し合える間柄だったことを明らかにした。小牧氏は川端康成の通夜と葬儀にも出席している。
3氏とも舞台芸術に関係する仕事に携わり、友人関係だったが、さらにもう一つの共通項が浮かび上がってくる。それは「江刺・岩谷堂」である。
小牧氏は岩谷堂銭町の生まれ。菊田一夫は岩谷堂の本町に太平洋戦争中、疎開していた。川端康成は岩谷堂小学校に、初恋の人・伊藤初代の父に結婚の承諾をもらおうと訪れたことがある。
ノーベル文学賞作家・川端康成、戦前戦後に活躍し、「鐘の鳴る丘」などを書き残した劇作家・菊田一夫、日本バレエ会の先覚者・小牧正英氏が、いずれも友人同士で、岩谷堂に深いゆかりをもっている。
この3人が酒を酌み交わしながら、岩谷堂の思い出を話し合ったことはあったのだろうか。
2人は川端と初代にまつわる研究に大きく貢献したが、残念ながら現在は、いずれも他界している。
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