小牧正英氏は、平成14年で92歳になられた。今も東京港区の白金で元気に暮らされている。(以後、敬称略)
名作の舞台を次々と踏み、さまざまな体験をしながらバレエを学んでいるさなか、戦争が勃発した。世の中全部が混乱に陥った。戦後まもなくの昭和21年(1946)4月、幾度もの危機を乗り越えて上海より日本に引き揚げる。 その年、東京バレエ団設立に参加。8月9日、東宝が主催し、日本で初めて「白鳥の湖」が帝国劇場で全幕上演された。小牧は、その演出・振付・指導のすべてを行い、出演もした。「白鳥の湖」は22日間にわたって公演され、空前の観客動員を記録した。この頃まで、日本では「白鳥の湖」を単に「白鳥湖」と呼んでいた。これに「の」を入れ、「白鳥の湖」としたのは、小牧正英である。なお、日本語表記する際、ストーリーをもった踊りによる舞台芸術を「バレエ」としたのも小牧である。スポーツのバレーボールとの混同を避け、区別するためであった。その後、小牧バレエ団を創設し、バレエダンサーの養成に努めながら、古典バレエの名作の数々を日本初演した。その活躍は、日本にバレエの真髄を伝え、普及させる原動力となり、日本バレエ界を短期間で世界水準にまで引き上げる重要な役割を果たした。
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