◆─多くの逸材を輩出 小牧正英は、昭和21年(1946)4月、上海バレエ・ルッスから帰国してまもなく、同年8月9日から30日まで、帝国劇場において日本で初めて「白鳥の湖」を全幕上演し、その演出、振付を担当、さらに出演し、当時、センセーショナルな脚光を浴びた。そして小牧バレエ団を結成。「白鳥の湖」「眠れる森の美女」などのクラシックバレエ、「シェヘラザード」「ペトルウシュカ」「火の鳥」などの近代バレエはじめ、数々のレパートリーを日本で初演。戦後のバレエブームの中心を担った。 劇場には、現在では考えられないような、すさまじい数の観客が訪れ、ロングラン公演が行われた。昭和29年(1954)に日劇で上演された「火の鳥」では、ノラ・ケイが火の鳥、小牧正英がイワン王子を演じ、24日間すべて満席になるほどの人気を呼んだ。また、その芸術性も高く評価され、文部大臣賞など多数の賞を受賞している。 この間、谷桃子(谷バレエ団代表)、太刀川瑠璃子(スターダンサーズ・バレエ代表)ほか、日本バレエ界における舞踏家や指導者を多数輩出する。演劇・映画方面でも、岸恵子、十朱幸代ほかが、小牧バレエ団でのレッスンを経て芸能界入りし、スターの座を射とめた。
【小牧バレエ団】
東京都渋谷区本町6−34−11(幡ヶ谷スタジオ) 電話03−3377−7764(代表)
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◆─芸術的理想を継承 世界最初のバレエ団、ロシアンバレエ団の主宰者であったディアギレフの歴史的なバレエを継承している数少ないダンサーである小牧正英を核として、古典バレエの普及を図ろうと、昭和62年(1987)、小牧正英が名誉団長、その実弟である菊池唯夫が団長、小牧正英の甥にあたる菊池宗が副団長となり、東京小牧バレエ団として新たなスタートを切った。 平成8年(1996)3月、小牧バレエ団は、創立50周年記念公演を盛大に開催したが、その年の11月、小牧バレエ団の土台造りに尽力した菊池唯夫団長が逝去。平成9年(1997)2月からは菊池宗が団長に就任した。 現在、日本のバレエ界では、クラシックバレエと現代バレエは数多く上演されているが、ディアギレフバレエの「ペトルウシュカ」「シェヘラザード」「イゴール公」「火の鳥」「牧神の午後」「バラの精」などが上演されることは少ない。 これは、ディアギレフバレエを上演する際の経済的な仕込みや、振付、演出が容易ではないことに起因している。小牧バレエ団は、この点で伝統的に評価が高く、またそれが小牧バレエ団の個性を形づくっている。 小牧バレエ団は、小牧正英の芸術的理想を継承しながら、観客を楽しませることができ、かつクオリティが高い日本有数のバレエ団として、文化芸術の発展に寄与している。
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